営業冷蔵倉庫のHACCP義務化と衛生管理の基礎知識

皆さん、こんにちは。食品専用の営業冷蔵倉庫として、保管から流通加工までを手掛けているまことサービスです。


自社の衛生管理体制に負担を感じていたり、委託先の倉庫が本当にHACCPに対応できているのか不安に思ったりしている方も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、HACCPは食品を扱うすべての事業者に義務づけられた衛生管理の考え方であり、保管や流通加工を担う営業冷蔵倉庫も対象から外れることはありません。


この記事で得られる3つの重要ポイントは以下の通りです。

まずは全体像から押さえていきましょう。


  • HACCPとは何か、資格制度との違いを含めて基本からわかること
  • 営業冷蔵倉庫にもHACCP対応が求められる理由を、統計データとあわせて理解できること
  • 委託先選びで見落としがちな確認ポイントがわかること




■ HACCPとは何か?食品衛生管理の基本を知るには

HACCPとは、原材料の受け入れから出荷までの工程で食品に害を与えかねない要因を洗い出し、特に重要な工程を継続的に見張って記録していく衛生管理の考え方です。難しく聞こえますが、根っこにあるのは「危ないところを先に見つけておく」というシンプルな発想です。

よく似た名前の資格と混同されがちなので、この章で整理しておきます。


・HACCPの定義と基本的な考え方

HACCPは、Hazard(危害)、Analysis(分析)、Critical(重要な)、Control(管理)、Point(点)の頭文字を取ったものです。厚生労働省が示す考え方では、次のような手順で衛生管理を組み立てていきます。


まず食品に害を与えうる要因(菌の混入や異物など)を洗い出し、そのうえで特に注意して管理すべき工程を「重要管理点」として決め、そこを継続的にチェックし記録として残していく、という流れです。行き当たりばったりの点検ではなく、あらかじめ危ないポイントを決めておいて重点的に見張る、という点がポイントになります。


・「食品衛生責任者」「食品衛生管理者」との違いを整理する

HACCPと混同されやすいのが「食品衛生責任者」や「食品衛生管理者」という資格です。これらは施設ごとに配置が義務づけられている人(担当者)を指すものであり、HACCPのような「工程の管理方法」そのものとは性質が異なります。


たとえるなら、HACCPは「衛生管理のやり方・ルール」であり、食品衛生責任者はそのルールを現場で回していく担当者、という関係に近いといえます。委託先を確認する際も、この2つを混同したまま話を進めてしまうと、確認すべきポイントがずれてしまうことがあるため注意しておきたいところです。


参照URL:

食品衛生の窓(東京都保健医療局)HACCPに沿った衛生管理の制度化ページ



■ 営業冷蔵倉庫でHACCPが義務化されている理由とは

HACCPは原則としてすべての食品等事業者が対象であり、食品を低温で預かる営業冷蔵倉庫も例外ではありません。背景には、国内で食中毒が今も一定数発生し続けているという実情があります。


なぜ冷蔵倉庫にとって温度管理がとりわけ重要なのか、この章で見ていきます。


・法改正の経緯と義務化の対象範囲

食品衛生法の改正を経て、2021年6月からはHACCPに沿った衛生管理が原則すべての食品等事業者に求められるようになりました。これは食品を製造・加工する工場だけでなく、保管や流通加工(ピッキングや日付の変更作業など)を担う事業者も対象に含まれます。


つまり、自社工場側だけHACCPに対応していても、委託先の倉庫が同じ水準で管理できていなければ、フードチェーン全体としての安全性は保たれにくい、ということになります。


・冷蔵倉庫特有の衛生管理ポイント(温度帯管理・入出庫管理)

冷蔵倉庫ならではの管理ポイントとして代表的なのが、温度帯の管理と、異なる食品同士が触れて菌が移ってしまう「交差汚染」の防止です。決められた温度帯を外れた状態が続くと、品質の劣化や食中毒のリスクにつながりかねません。


実際、厚生労働省・食品安全委員会が公表した令和6年の食中毒発生状況によると、令和6年の食中毒事件数は1,037件、患者数は14,229人、死者数は3人にのぼり、前年より事件数が16件増加しています。年によって多少の増減はあるものの、食中毒が珍しい出来事ではないことがうかがえる数字です。最新の状況は、公的機関の発表を随時ご確認いただくことをおすすめします。


参照URL:

令和6年食中毒発生状況の概要(食品安全委員会公表資料)

食品衛生の窓(東京都保健医療局)HACCPに沿った衛生管理の制度化ページ



■ HACCP対応が不十分な倉庫に委託するとどうなる?

衛生管理の体制がはっきりしない倉庫に委託してしまうと、温度管理の乱れや記録の不備によって、食中毒や品質クレームのリスクが高まりやすくなります。これは自社ブランドの信用にもかかわる問題です。


ここでは、想定しておきたいリスクと、現場で起こりやすい傾向について触れておきます。


・想定される主なリスク(食中毒・品質クレーム・出荷停止)

衛生管理が不十分なまま運用されていると、次のような事態につながるおそれがあります。


  • 保管中の温度逸脱による食品の品質劣化
  • 交差汚染などによる食中毒の発生
  • 取引先からの品質クレームや、最悪の場合の出荷停止・自主回収


どれも一度発生してしまうと、原因の特定や対応に時間と労力がかかりやすいものばかりです。だからこそ、事が起きてから対処するのではなく、委託前の見極めが大切になってきます。


・衛生管理体制が不透明な委託先で起こりやすい問題(一般的な傾向として)

衛生管理の記録がきちんと整理・保管されていない現場では、何か問題が起きた際に原因究明までに時間がかかりやすいことが、業界全体としても一般的に指摘されています。逆にいえば、日々の記録がきちんと残っている倉庫であれば、万が一の際にも早めの原因特定や再発防止につなげやすいといえます。


もちろん、HACCPに正式対応していない倉庫がすべて問題を起こすというわけではありません。ただ、確認すべき情報が少ないまま委託先を決めてしまうと、後になって不安が残りやすいというのも事実です。


参照URL:

令和6年食中毒発生状況の概要(食品安全委員会公表資料)



■ 食品メーカーが委託先を検討する際に押さえておきたい視点とは

委託先選びの第一歩は、HACCP対応の状況を制度面からひととおり確認しておくことと、自社が求める保管・流通加工の範囲をあらかじめ整理しておくことです。

細かな比較基準については別の記事で詳しく取り上げますが、ここでは最初に押さえておきたい基本的な視点をご紹介します。


・委託先のHACCP対応状況を確認する基本的な視点

委託を検討する段階では、次のような点を最低限確認しておくと安心です。


  • 食品衛生責任者などの担当者がきちんと配置されているか
  • 温度管理や作業工程の記録が日常的に残されているか
  • 異常があった際の対応の流れが決まっているか


政府統計の総合窓口(e-Stat)でも食中毒統計調査が毎年継続的に公表されており、こうした公的なデータの積み重ねからも、衛生管理の記録を残すことの重要性がうかがえます。


・委託前に自社で整理しておきたい要件(保管量・流通加工範囲など)

委託先を比較する前に、自社側でもある程度の条件を整理しておくと、その後のやり取りがスムーズになります。具体的には、必要な保管量や温度帯、ピッキングや日付変更といった流通加工の希望範囲などです。


これらの条件があいまいなまま問い合わせを進めてしまうと、見積もりの比較がしづらくなったり、後から「思っていた内容と違った」ということになったりしがちです。まずは自社の希望を簡単にでも書き出しておくことをおすすめします。


参照URL:

食中毒統計調査(政府統計の総合窓口 e-Stat)




■ よくある質問

・HACCPと食品衛生責任者は同じものですか?

異なるものです。HACCPは工程の管理方法そのものを指し、食品衛生責任者は施設ごとに配置が義務づけられている担当者を指します。両者は役割が異なるため、混同しないよう整理しておくと安心です。


・営業冷蔵倉庫であればすべてHACCP対応済みと考えてよいですか?

一概にそうとは言い切れません。制度上は原則すべての事業者が対象となっていますが、実際の運用レベルには差があるのが実情です。委託を検討する際は、記録の残し方や担当者の配置状況など、具体的な運用面まで確認しておくことをおすすめします。


・HACCP対応の確認は自社だけでできますか?

基本的な確認であれば自社でも可能ですが、記録の運用実態など、より踏み込んだ確認が必要な場合は、委託候補先へ直接ヒアリングしたり、現地を見学したりするのが有効です。気になる点があれば、遠慮なく問い合わせてみることをおすすめします。



■ まとめ

HACCPは食品を扱うすべての事業者に義務づけられた衛生管理の考え方であり、営業冷蔵倉庫への委託先を選ぶ際にも、その対応状況をきちんと確認しておくことが欠かせません。

まことサービスは、食品専用の営業冷蔵倉庫として、保管から流通加工までを一貫して手掛けています。衛生管理の体制や委託の範囲について、具体的な確認事項がある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

自社の衛生管理体制やHACCP対応の状況について、第三者の視点で確認してみたいという方は、営業冷蔵倉庫への委託を検討し始めた段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。